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麦ふみクーツェ (新潮文庫)

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著者

いしい しんじ

その他 いしい しんじ (著)
発売日 2005 年 07 月 01 日
メーカー 新潮社
ページ 493p
リンク Amazon.co.jp で内容を見る
BIBIO レビュー :
ゆうぞう さん
5 / 2006-08-01 00:17

「ねえ、クーツェ」
 とぼくは声にださず胸のうちで呼びかける。「いいも悪いもない、きみはただ、麦ふみをつづけるしかないんだね」
 クーツェが一瞬たちどまったような気がした。
 でもすぐに、おちついた足ぶみの音が耳のそばでひびきだした。
 とん、たたん、とん
 とん、たたん、とん
−−むろんだよ。
 と少し顔をあげてクーツェはいった。
−−麦をふむのに、いいもわるいもないよ。


例えばこの部分、僕はこう置き換える。
『いいも悪いもない、ぼくは旅を続けるしかないんだね』
読む人によってこれは何にでも置き換えられるだろう。

「真実とは空(くう)であり、空とは満たされていることを意味し、自然の一切の法則は空の中にある。(ひとは何かに全身全霊をかけて取り組み、その結果にとらわれない時、真に幸せになれる)」という、ダライ・ラマが説いてもおかしくないような普遍的な真理を、いしいしんじの物語はやさしく教えてくれる。
Amazon.co.jp レビュー : ognl:item.amazonRate.averageRate ( 5.0 点 / 15 人)
珠玉のファンタジー
/ 2008-04-02
こんなに本のページを夢中にめくったのは、いつ以来だろ!
これはとある港町から音楽を通じて始まる、
『ねこ』と呼ばれる少年を巡る、不思議な成長の旅物語。

とん、たたん、とん。
そんな不思議な音と共に突然現れた不思議な小人(?)『クーツェ』はもとより、
この本の登場人物は、個性的でみんな変テコ。
銀の杖を片手にいつも怒鳴り散らしている、ティンパニ奏者のおじいちゃん。
数字に取り憑かれ、街の人からは『ねずみ男』と呼ばれる数学者の父。
盲目の優しいボクサー、ちょうちょおじさん。
茶色いモワモワの着ぐるみを着た、へんくつな世界的チェリストの『先生』。
『みどり色』という名の、心優しく美しい全色盲の女の子・・・。

けれど物語の中でねこはこう言う。
 『みどり色は何十万にひとりなんかじゃない。
  この世でたったひとりなんだ。ひとっりって、そういう事でしょう?』
彼が言った様に、皆が変テコである事を僕も愛しく思う。
変テコじゃない人なんて、たぶん一人もいやしないから。


読み終えると不思議な充実感に包まれます。
きっと多くの人が、
家族や周囲の人々、そして何より自分自身とこの世界を、
今よりもずっと、愛おしく感じると思う。

『モモ』など世界の名作と肩を並べる位の、素晴らしいファンタジーだと僕は思う。
独特の世界観
/ 2008-02-22
いしいさんの作品を読むのはトリツカレ男に続いて2冊目です。
どこの国かわからないけどどこか懐かしい港町から物語が始まります。

いしいさん独特の舞台や人物の造形が秀逸だなぁと思います。
闇ねずみの出現理由と存在に関する部分がわかりにくくて、その部分が読んでいてもたつきましたが、中盤あたりからまた一気に読めてしまいました。

作家の栗田有起さんの解説もまたうなづける部分が多くて、読み終わったあとの言葉にしにくい感情をうまく代弁してもらった感じでよかったです。
これは傑作。
/ 2007-11-08
まさに”人が、音楽を必要とするわけを、こころに響かせてくれる本”

ひとりで生きてくためにさ、へんてこは、それぞれじぶんのわざをみがかなきゃなんない。
そのわざのせいで、よけいめだっちゃって、いっそうひどいめにあうかもしんないよ。
でもさ、それがわかっててもさ、へんてこは、わざをさ、みがかないわけにいかないんだよ。
それがつまり、へんてこさに誇りをもっていられる、たったひとつの方法だから。

なるほどなあ??と思う作中の文章であります。
いつまでも旅を共にしたい
/ 2007-03-30
物語の途中、主人公はある事に気づき、私たちに教えてくれました。方向図なんてないってことを。
目が見えようが見えなかろうが、人は地図のとおりに歩くことはできないってことを。
予想もつかないついたてが突如としてあらわれ、人はその先へ歩いてかなきゃいけないってことを。

ついたての先へ先へ進む主人公「ねこ」の姿を、いつまでも追いかけたくなる作品です。

例えば、「アルケミスト」「星の王子様」
などの作品が好きな方は、面白く読めるのではないのでしょうか。
大人のための童話です♪
/ 2007-02-17
はじめていしいしんじさんのおはなしを読みました。
大人の童話だと思いました。それもとてもとても深い童話です。
読みながら村上春樹と宮沢賢治が頭を何度もかすりました。
不思議な登場人物が何人もでてきて
主人公の’ねこ’に影響をあたえて成長していくすがたを軸にして
おはなしはすすんでいきます。
はじめ読んだとき、なんだこれは・・・・どうなっちゃうんだこの話は、こんなに長いのにと思っていました。
ところが、読めば読むほど、先が読みたくなります。
最後になってはじめて、ああそうだったのか・・・・・いろんなことがつながって、
かかれている言葉のひとつひとつには実は重みがあって考えさせられます。
この世で生をうけて生きていることについて、そして
うわべにごまかされることなく、本当に大切なことは何なのか
自分は自分でいいのだということ。
せつなさちょっぴり、生きていくことに勇気をもらえる一冊だと思います。
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